鮒寿しは、琵琶湖の固有魚である子持ちのニゴロブナを主に使用。
東南アジアから稲作と共に伝わり、江戸時代には公家や
武家への贈答品として珍重され続けてきた、湖国近江の名産品です。
鮒ずしは「なれずし」の一種。
「なれずし」は魚介類を炊いたご飯と共に
長い日数をかけて重石で押し、乳酸菌で発酵させた保存食品です。
使用しているニゴロブナは骨がやわらかく、身の甘みが強く、卵が細かいのが特徴です。
喜多品老舗の作り方は「百匁、百貫、千日」と呼ばれる、千日漬け。
じっくりと長い年月をかけて、美味しい鮒寿しを作っています。
まずはじめに、鮒のうろこを取り除きます。
うろこが取れてすっきりした鮒。
次は鮒寿しづくりでも特に難しい作業、
「筒抜き」です。
卵を残し、内臓のみをエラから抜きます。
苦玉と呼ばれる胆のうを潰さないように
取り出すのがコツ。
取り出すには「まな箸」という細長い針金のようなものを使います。魚や鳥を料理するときに使うもので、
まな箸一本を巧みに使って内臓を取り出していきます。
この”抜く”作業が大事。
水洗いし、血抜き。
きれいになった鮒のエラから塩を詰めます。
塩と鮒を交互にしながら木桶に敷き詰めていきます。
落し蓋と重石をのせて2~3年おきます。
鮒寿しを切ったときに、羊羹を切ったように卵が
なめらかになることが理想とされています。
そのために2年、じっくりと塩漬け。
鮒寿しづくりにかかせない「三つ縄」。
1つ作るのに約30mのわら縄を使います。
力いっぱい込めて作るので、
作りあえた後は手に力がはいらないほど。
漬ける時に重石の下に敷きます。
虫やごみが入るのを防いだり、
パッキンの役目にもなっています。
いよいよ飯漬けです。鮒とは久しぶりのご対面。
七月の土用の頃に鮒を取り出し、洗い流します。
ここから本漬けに移ります。
まずは洗い流した鮒を一日干します。
極上近江米を炊き上げ、冷ましてから塩と合わせます。
飯と鮒を交互に木桶に敷き詰めていきます。
落し蓋と重石を乗せて1~2年おきます。
ご飯に漬けることによってはじめて旨味がでます。
「百匁、百貫、千日」。百匁とは約375gのこと。
一尾百匁のニゴロブナを百貫(375kg)入る桶で
塩漬け2年、飯漬け1年。喜多品老舗の鮒寿しはこうして出来上がるのです。